どうも,じーむです.今回は変数がたくさん登場する面白い問題を集めてみました.
多変数の問題は大きく分けると二種類あります.
- 等式・不等式の証明
- 最大・最小の求値
です.まあ,アプローチはどちらに対しても同じで
の3ステップです.まあ,百聞は一見にしかずなのでとりあえず解いてみましょう.
ちなみに,今回は領域図示型の問題は扱いません.ボリュームが多くなってしまったから図を描くのがめんどくさかったからです.
例題1
まずは(1)から.A≧Bの不等式の証明は一辺によせてA-B≧0を示すのがセオリーです.というわけで,
です.途中の因数分解も頻出の変形ですね.不等式の証明の基本形でした.
では(2)です.これも(1)と同様に一辺によせちゃいましょう.
です.ここで(1)と違うのは,一文字(ここではa)について整理してみても因数分解できる形ではないということです.
そこで,aについての一次関数とみてやりましょう.つまり,
こんな感じです.一次関数とみること考察がグッと楽になりますね.
次はもう少し手ごわい問題をやってみましょう.
例題2
(1)は例題1の復習です.サクッとやっつけましょう.
等式が与えられている場合,変数を一つ消すことが出来ます.対称性が崩れたりしない限りは基本的に一文字消去してしまって大丈夫です.今回はcを消すことにしましょう.
キレイに0になりましたね(アタリマエですが).
問題は(2)です.
を示せばよいのですが,これ以上変形できそうにありません.そこで,a, b, cのどれかを変数としてみて一変数関数の考察をしていくのですが,ここでポイントがあります.条件の不等式(a+b≧c)を見ると,aとbについては対称でcだけ別扱いになっています.このようなときはcを変数としてみてやれば,cに何かを代入することでcが消えて対称な式が作れそうです.というわけで
この三次関数の正負について考察することになります.
f'(c)の正負はabの値によって変わります.
1.ab>0のとき
増減表は
c | … | -√(ab) | … | √(ab) | … |
---|---|---|---|---|---|
f' | - | 0 | + | 0 | - |
f | ↘ | ↗ | ↘ |
のようになります.a+b≧cなので,端点であるa+bと-√(ab),√(ab)との位置関係も考えないといけませんねえ.
高校数学で頻出の有名不等式である相加相乗平均の形を連想して,
かと思いきや,ab>0とはいってもa<0かつb<0だとaとbが√に入らないからダメで,a>0かつb>0でないと使えないんでした.ですから,後づけ的に場合分けを設定して
1.1 a>0かつb>0のとき
なのでグラフは次のようになります.
c=a+bかc=-√(ab)で最小値を取りそうですね.(1)からf(a+b)=0なので,f(-√(ab))≧0になりそうです.実際,
したがって,たしかにf(c)≧0です.
1.2 a<0 かつb<0のとき
明らかにa+b<0<√(ab)なので,a+bと-√(ab)の位置関係を調べてもよいのですが,ここはスマートに
よって,f(c)≧0.
以上から,示すべき不等式が言えました.
別解
ちなみに,(1)からcについての関数に対する因数定理を連想することで,
とできますから,あとは平方完成を利用して
とする方法もあります.まあ,一変数関数としてみるという点では全く同じ発想なのですが,こちらの方がうまいです.作成者はこっちを想定していたと思いますが,むずかしいでしょう.年度は忘れましたが,たしか東北大学の問題です.
最後は超難問です.しかし,今回の記事の冒頭で紹介した基本にしたがって解けば手が届くはずです.もとの問題はあまりにも難しかったので,誘導をつけておきました.
例題3
(1)は易しいです.与式を変形して,
を示せばよいでしょう.
おしまい.有名不等式ですから変形ごと記憶しましょう.等号はx=y=zのとき成立します.
実はこの式,シュワルツの不等式とも絡んでいるのでそれがわかるような別解を示しておきます.
シュワルツの不等式はベクトルの内積を使って幾何的なイメージを持つと良いです.証明自体は他にもいろいろあります.
(2)これは相当むずかしいです.(1)の誘導を活用したいので,二乗のカタマリが出てくるようにとりあえずルートの中身を展開しちゃいましょう.すると,(1)の不等式を使って変形できます.
ようやく一変数関数の問題に帰着できました.これをノーヒントで出すのは気合が入りすぎです.大分医科大学*1の問題だったと記憶していますが,本番で解けた人はいるのでしょうか.僕なら無理です.
とにかく,等号の成立が保証された状態で(与式)≦f(t)ということがわかったので,あとはf(t)の最大値を求めるだけです.
実は,最後の変形がとても重要です.f(t)のグラフを描くためにはf'(t)の正負を知る必要があります.分母は常に正なので,全体の符号は分子の符号と一致します.分子がF(t)+G(t)の形のままでは正負を判断しづらいですが,F(t)-G(t)の形にすることでそれが解消されます.なぜなら,F(t)のグラフとG(t)のグラフを同じ座標平面に描いてF(t)がG(t)の上にあればF(t)>G(t)なのでF(t)-G(t)>0とわかるからです.
つまり,複雑なF(t)+G(t)のグラフを描かなくても,単純な二つのグラフF(t), G(t)を描いてそれらの位置関係から正負がわかるということです.
よくf'の正負を式から判断できないからといってf''を求めたりする人がいますが,差の形に変形することで見通しがよくなることがあるので,覚えておくとよいです.
ちなみに,この問題では有理化を用いて変形するのは得策ではありません.なぜなら,t=1/4で分母がゼロとなり煩わしいからです.これがtの定義域に入っていなければ有理化でも構わないのですが.
さて,上の理屈がわかったところでy=√(t-t^2)とy=√3(t-1/2)のグラフを描きます.後者はともかく,前者のグラフをすぐに描けますか?実はこれ,円の上半分です.
となります.論理記号を使って書いていますが,yが0以上という条件の下でルートを外すために二乗したら円の式になったというだけです.
余談ですが,この知識は数Ⅲの積分で多用します.r>0として,上の議論を適用すれば
ですから,
は下図の斜線部の面積を表します.
このように,ルートを使って半円を表せるという知識を使うことで図形的に積分の値を求められます.置換など必要ないわけです.
話をもどしますが,f'(t)の分子において,前者の式は中心が(1/2, 0)で半径が1/2の円の上半分.後者の式は傾きが√3で(1/2, 0)を通る直線です.傾きが√3ということは,x軸と60°で交わるということです.
したがって,図形的に
となります.
これは,
であることを意味します.
よって,増減表は下のようになります.
t | 0 | … | 3/4 | … | 1 |
---|---|---|---|---|---|
f' | + | 0 | - | ||
f | ↗ | 3/2 | ↘ |
以上より,
です.一つ目の等号は(1)より,x=y=zのとき成立です.二つ目の等号はt=3/4のとき成立します.
つまり,与式の最大値はx=y=z=3/4のとき3/2です.
とまあ,不等式の問題は結局のところ関数の扱いに帰着するということが実感できたのではないかなと思います.次回は,領域図示に帰着する問題を扱いたいと思います.それでは.
(じーむ,クソ大学生)